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地方の若手・中堅騎手たちの苦悩

http://kyusyukeiba.seesaa.net/article/60246477.html
地方だけに言えることではありません、中央の騎手も同じです。減量特典の取れた若手や中堅騎手たちの多くが
それ以上進むことも退くこともできない袋小路に迷い込んでしまうことが多くあります。
成功する騎手の方が稀かもしれません。勝負の世界は厳しいからそれは当たり前だと言う人もいますが、
少なからず「コネ」があったはずです。もちろん中には少ないチャンスをものにして本当に実力で今の地位に
上り詰めた人も沢山います。しかし最近ではそのチャンスすら若手からは奪われているような気がします。


地方競馬は今どこも厳しい状況が続いています。主催者は支出を切り詰めようとします。
度重なる手当てや賞金のカット、しかしそれは馬主だけでなく調教師や騎手たちに直接重くのしかかります。
それでも上位の騎手たちは騎乗し成績を残すことで賞金を稼ぐことが出来ますが、そうでない騎手たちは……
中央では騎乗ができなくても調教をこなし、所属厩舎から給料を貰うことで生計を立てることが出来ますが
地方の騎手はなかなかそうも行きません。少ない給料にこれまた雀の涙の賞金、想像に余りあるものがあります。


地方競馬内でも格差がありますしね。高知の上位騎手たちがこぞって他へ移籍するのも、本当は残りたくても
生きていくためには騎手を続けるには仕方なく、泣く泣く去っていくのです。高知だけではありませんが。また、
以前からこのブログでも書いてきたことですが、佐賀競馬は「よそ者」に対して冷たい傾向があるように思います。
他地区から移籍した騎手が次々と辞めていった時期がありました。例えば品田騎手や前野騎手など。
こういう業界では派閥とまでは言わないけれどある程度の繋がりがあって、仲間意識を持って一体となる
という意味では良いけれど、他者を除け者にしがちなんじゃないだろうか。悲しいかな、そう思います。


よく競馬場でパドックや直線などで騎手に対し罵声を浴びせる人がいます。競馬場だけでなく最近ではネットで
騎手たちが誹謗中傷を受けることがあります。ある程度は構わないと思います。騎手もこういう商売ですし、
失敗すれば「ヘタクソ」となじられこき下ろされるのも仕方ないと思っているでしょう。しかし納得のできない
ことも内心は多いでしょう。成績を残せなかったり「ヘタクソ」に見えるのはそれなりの理由があるからです。


それは何よりも馬の「質」。
トップジョッキーたちが騎乗する馬のほとんどは脚元が丈夫でクセも少なく、何より能力がある馬です。
成績下位の騎手たちはその逆、脚元が弱くて目一杯追うことができず、気性が激しくてどこかにクセがあり、
何より能力が不足している馬。トップジョッキーが見捨てた馬たちが下位の騎手たちに回ってくるのです。
騎乗機会すらままならないので、そういう馬でも騎乗したいと思っているのです。
また地方競馬にはそういう馬が非常に多いのです。どんな馬でも、とにかくコンスタントに出走できれば
出走手当てが入ります。出走さえできれば預託料を超える分を稼ぐことができます。
今にも壊れそうな脚を引きずって、言葉は悪いですが毎回騙し騙し走らせているのです。
よくありますよね、そういう「とにかく使わせる厩舎」って。南関東でもそれで有名な厩舎があったりします。
地方では最近、そういう馬ばかりを所有する馬主も増えているようです。それは別におかしなことではなくて、
収支をプラスにしたい馬主の心情としては当然のこと。その為にできるだけ上手いと言われる成績上位騎手に
自分の馬に騎乗してほしいというのも分かります。昔は各競馬場にいた名物大馬主というのも減ってきています。
なんというか……若い騎手や調教師を育てようというような「余裕」が年々失われているような気がします。
調教師も所属馬が少なくなって預託料が入らないから、所属騎手の給料を下げざるをえない。
地方の調教手当てなんか無いに等しいくらいのものだし、仮にずっと調教している馬でも
自分が乗せてもらえるとは限らない。調教している騎手とは別のトップジョッキーが騎乗することなんて
日常茶飯事です。馬主の鶴の一声でお手馬を急に奪われたり。これらは中央も地方も同じですがね。
なんとか支出を少なくしようと騎手出身の調教師などは自らがほとんどの馬を調教してしまうケースもあります。
でもそれも仕方の無いことで、皆なんとか食べていこうと必死なのです。


話を元に戻しますが、そういう欠陥のある馬に乗れば当然勝つことも、馬券に絡むこともできないでしょう。さらに
騎乗すれば悪い結果ばかりです。スタートで出遅れれば騎手が悪い、道中集団から取り残されれば騎手が悪い、
直線でササって他馬に迷惑をかければ騎手が悪い、脚元が弱くて強く追うことができないのに八百長呼ばわり。
これで「ヘタクソ」呼ばわりは騎手があまりにも可哀想です。もちろん失敗もあるでしょうが全てではないでしょう。
騎手は騎乗数をこなし多くのレースを経験することによって技術、駆け引きで成長します。中央の若手や中堅を
見ているとよく思うのですが、騎手はやはり騎乗してナンボだと。調教だけやっていても、レース本番では
調教なりの騎乗しかできなくなるのです。また、その機会を失われているのにいきなり結果を出せというのも酷。
これは誰を責めるというのではなく、日本の競馬界全体の問題だと言えると思います。


ファンも馬主も現金なものです。自分が買った馬券がハズレれば騎手に文句を言うし、絡んでも文句を言うし、
馬主は自分の馬に乗ってもらって酷い負け方をしたり、または不利を受けさせられたりしたら騎手を批判します。
しかしなかなか自分が悪いとは思わないものです。自分の馬券が下手だという方向にはなかなか目が向かない。
馬主は自分の馬がダメだったからとか、馬にクセがあって不利を受けたとかまではなかなか思うことが出来ない。
本当に強い馬に乗ればトップジョッキーなど関係なく誰が乗っても勝てるのですから。負けた言い訳の粗探し。
これらは「お金」に直接関係することなのでどうしても感情的になってしまいがちですが、少しは考えてもらいたい。
全てを加味した上で批判しているのかと問いたい。騎手批判をただの不満の捌け口にしているだけではないのか。


地方の中堅騎手たちはどんなに生活が厳しく、辛い仕事であっても頑張っているのです。
それはひとえに、「競馬が好きだから」「騎手が好きだから」という理由にほかなりません。
皆、デビュー当時は憧れてこの世界に入ってきているのです。大きな夢を抱いて入ってくるんです。
若くして引退する騎手の多くは、色々と考えて考え抜いて、それでもどうしようもなくて……。
辞めたいはずがないじゃないですか。最後までなんとかして騎手を続けたいと皆思っていたことでしょう。
でも、やっぱりどうしようもなくなって辞めていくんですよ。悲しいじゃないですか、涙が出ますよ。


できれば頑張っている騎手や調教師、関係者たちの心情を少しでも汲み取った上で馬券を買ってほしい。
そういう考えが少しでもあれば騎手に対して「落ちて死ね」だのいう野次やネットでの書き込みは少なくなると思う。
面白い野次ならいいんだけど、罵声中傷は大嫌いです。お前こそ死ねばいいのにと内心では常々思っています。
競馬の楽しみ方は人それぞれだろうけど、実際にやっている人たちを少しは思いやってください。お願いします。