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アビスパは「即戦力補強型」と「若手育成型」どちらを選べばいいのか

今季アビスパ福岡サテライトリーグに参加しませんでした。いや、参加することができませんでした。
選手登録数を少なくしたからです。田部GMは「少数精鋭で行く」などとおっしゃっていましたが、要は人件費削減。
お陰で選手層は薄くなり、J1に昇格することができなかったのは皆さんもご存知の通り。


サテライトというのは若手の育成の場であり、怪我や不調に陥った選手の調整の場でもあります。
普通のチームならばサテライト専属のコーチもいるのですがアビスパはトップチームのコーチしかいません。
トップに帯同できなかった若手選手は練習すらままならなかったと思います。その対応措置として今年は
福岡大学サッカー部と提携し、トップに帯同できなかった選手は大学生と共に練習できるようにしました。
しかしそれは結局は根本的な解決策にはならないのです。サッカーは集団で行う競技です。個人練習はできても、
コミュニケーションや戦術理解はどうしても遅れてしまう。さらにトップと合流しても、合同練習ではいつも
次試合を想定した「仮想敵チーム」のメンバーでしかなく、そこでも大学生やユースなどと混じっての試合。
不慣れなポジションをやらされ、思い通りのプレーができない。当然モチベーションが上がるわけがありません。
(FWの釘崎選手が練習でSBばかりやって、意外と上手くいったのか先の試合ではDF登録でベンチに座ってましたが)
こんなチームでは若手が育つわけがありません。目先のことに囚われトップチームばかりに力を入れて、
その一年間が失敗すれば最初からやり直し、ということの繰り返し。どこに中長期的な目標があるというのだろう。

■「うちで4年預りたい」
乾先生*1はズバリいいました。「あそこでは有能な素質を持つ本田君は育てきれないです。」
(中略)
■「アビスパにだけはやらない」
地元有力校の監督さんの言葉です。
(中略)
「監督の首を次々と代え、ツギハギだらけの場当たり的補強で戦い方は定まらず、サポーターは次のゲームの勝利のことだけしかない。若い選手を育てよう、温かい目で見守ろうということもなく目先の結果ばかりだから、積み上げたものがない。だから1部へ上がってもまたすぐ落ちる。積み上げるという感覚は、県リーグからプロリーグまでに至る辛苦を味わうことなくファンが草の根の視点でクラブを育て上げた経験がないから仕方ないのかも知れませんが。」
「今のアビスパはぐずぐずしていたら、県リーグから上がってきた下積みの苦労を知ってるクラブのチームに必ず追いつかれる。でも、まだ間に合うと思うのですよね。」

http://d.hatena.ne.jp/orion1014/20081203/p1

「あそこ」とは当然アビスパのこと。そして地元高校監督のお言葉。これらにすべてが集約されていると思います。
今のアビスパに地元校からの信用という文字は無いに等しい。そりゃそうです、簡単に若手を切っていくような
場当たりの方針しか持っていないチームに誰が教え子をやろうとするでしょうか。
さらに詳しく書かれていますので、どうぞリンク先をご覧ください。


チームの運営費には限りがあるわけで、どこかに犠牲が出なければならないのは事実かもしれない。
(経営陣がしっかりしないといけないという結論に達するのは当然だが、ここではその話はひとまず置いておく)
トップに高額な選手を並べてサテライトを犠牲にするか、それともトップの選手層を犠牲にしてでも若手育成の為に
サテライトやユースを充実させるか。福岡はここ数年、前者を選んで失敗を続けてきました。
後者でも成功するチームはあるのです、それは資金が潤沢にあるチーム。アビスパもJ2の中に入れば比較的上位に
位置するチームではあるのですが、ここ数年はそれで失敗(もちろんそれ以外の要因も大きいのですが)。
来年以降はさらに運営費が削られていくのは目に見えています。
参考:アビスパ福岡 「大都技研」の出資を承認 - 座布団が行司にクリーンヒット
しっかりとした指針を設定することができず、無為に時間だけを浪費させた経営陣の責任は大きいものがあります。


実は過去に後者を選んで成功した時期があったのです。それが松田浩監督時代なんですよね。あの頃はよかった。
2001年にJ1からJ2に降格し、2002年は1年でJ1復帰を目指そうと(現在の状況に似ているが)実績ある選手を補強、
しかしJ1には上がれず以降は方針を大きく転換、若手育成型のチームへ。それから松田氏が指揮を執り始めました。
千代反田、米田、宮崎、古賀、宮原、林、太田、増川ら若手を積極的に起用し、川島、山形、水谷ら中堅が支え、
原田、蔵田らベテランがそれを引っ張る。さらには田中、中村といった有望株が入団し、2005年にJ2で2位となって
J1昇格を決めた。あの頃はチームがいくら負けようが我々も我慢することができた。チームが若手中心に転換して、
今後どうしたいかという目標がはっきりと見えていたし、着実に力を付けていくチームが目に見えて分かったから。
2006年のJ1でのシーズンも順位だけ見れば下位だったが、J1でも十分にやっていけるという手応えが伝わってきた。
アビスパのサッカーを見ていて本当に面白く楽しい時期だった。そんな中でのシーズン途中での松田浩監督解任。
その後はもう雪崩のごとく崩れ落ちて行くだけでしたね。一から築き上げてきたチームが瓦解するのは一瞬のこと。
参考:アビスパ福岡降格特集新聞記事のまとめ - 座布団が行司にクリーンヒット


アビスパは今、大きな転換の時期を迎えていると思います。このままダラダラとその場補強を続けていくのか。
それでも運が良ければ数年に一度くらいは当たりを引いてJ1に昇格することができるかもしれません。
しかしその後が続くことはないでしょう。3〜5年ほどのスパンで若手を育成し昇格を目指すことが今一番確実に
チームが存続していける方法なのではないかと思います。これはアビスパに限らず資金の豊富でないチーム全般にも
言えることで、高い選手を取れないならば自前で育てていくしかないのです。育成途中で引き抜かれたりすることも
よくあることですが、他に手段は無いわけで。先日、FC岐阜が15人もの選手を解雇していましたね。
チームの経営難が要因の一つに挙げられていましたが、岐阜はJ2に昇格した去年から今年にかけて大学や高校から
新人選手をかなり獲得しているんですよね。今がチームを一から作り直している途中なのだと思います。
昨年のアビスパも同数の15人という大量解雇をしましたがそれとは比べようがありません。アビスパの場合は
ユースから昇格したばかりの選手を切ったのですからね。解雇するだけ解雇して選手枠を少なくして、
この年の新人はユース昇格のみ。これのどこに計画性があるというのでしょうか。
今年もそうなりそうな気配が大きく漂っています。流石に去年解雇し過ぎたので今年の解雇選手は少ない方でしたが
新人はやはりユース昇格の一人だけ。来年はさらに選手登録数を減らすという方針をうちだしています。
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アビスパ福岡は何度失敗を繰り返せば真っ当なチームになれるのだろうか。いいお手本が過去の自分たちに
あるというのに。今からでも遅くない、若手育成主体に切り替えるしかないのではなかろうか。

*1:乾真寛氏。福岡大学教授、サッカー部監督