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コウエイトライが新潟ジャンプステークスを制す

21日の新潟競馬第9R新潟ジャンプSをコウエイトライ(牝9歳、栗東・山内厩舎)が制し、障害重賞最多勝タイとなる7つ目の重賞勝ちを挙げた。これは、グランドマーチス(74年秋、75年春・秋の京都大障害、74、75年春・秋の中山大障害)、バローネターフ(77年春・秋、78年秋、79年春・秋の中山大障害、77年春・秋の東京障害特別)に続いて、中央競馬史上3頭目

http://www.keibabook.co.jp/homepage/topics/topicsinfo_new.aspx?subsystem=0&kind=0&category=00&filename=KON20084

障害の賞金4億2086万8000円は現役ではキングジョイ(4億69万9000円)を上回り首位。高田は障害重賞を施行する全6場で重賞V。

http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2010/08/22/22.html

骨折休養で2009年の1年間は1走もできずに終わり、今年2010年は好走はするもののなかなか勝ち切れないレースが
続いていました。逃げ馬ということでマークされて後ろから突っつかれれば脆い面を見せてしまうのがこの馬の弱点。
それを知られている上で逃げ切ってしまっていたのが全盛期でしたが、9歳ともなるとさすがに衰えもあるのだろう、
強引に逃げて押し切るというレースが見られなくなっているのは事実です。今回も面子が軽かったのが大きな勝因。
バトルブレーヴが無事に出走してきていればこのような流れにはなっていなかったでしょう。
とはいえ、3走前の東京ジャンプSから復調の気配が見え始め、前走小倉サマージャンプではバトルブレーヴと
ランヘランバの一騎打ちとなったものの、この馬の競馬を貫いて3着に好走していました。ここでの勝利は納得。
怪我の小坂騎手の代わりに騎乗した高田騎手は代打の重圧もあったのでしょうか、最後の直線で外に寄れて
3着ビコーフェザーの進路を妨害したとして騎乗停止に。もしかしたら降着もあったかもしれなかったわけで
勝たせてくれたことは嬉しいが、反省してほしいものだ。あれがなくても勢いからすれば勝っていたと思う。
終わってしまったことは仕方ない。それはそれとして、障害重賞のある6場での重賞制覇おめでとうございました。


コウエイトライの方の記録だが、あのグランドマーチスバローネターフという障害界の歴史に残る名馬たちに
肩を並べることになったことは本当に素晴らしいと思う。現役の中でも中山大障害2勝のキングジョイを抜き
単独トップの賞金を獲得。この年齢になっても重賞を勝てるほどの実力を持っていることは本当にすごいと思う。
しかし一方でこの記録に違和感を覚える人もいるようだ。「グランドマーチスバローネターフは中山の大障害を
制してのものだが、コウエイトライはJG3やJG2で弱い相手に勝ち積み重ねてきたものだから、価値は下がる」と。
以前から中山の大障害コースを頑なに回避する陣営に対する批判は多かった。この姿勢は田所清広厩舎から
山内研二厩舎に転厩してからも変わらない。飛越が高くないので大障害コースでは死の危険が伴うのだ。
どうして日本の障害G1は中山競馬場だけなんだろう - 座布団が行司にクリーンヒット
ただコウエイトライだけが批判されるだけの話ではなく、日本の障害レースのシステムのことも考えてみてほしい。
一度走ってみればいいじゃないか、という話では済まされないのだ。その一度の走りで万が一のこともあり得る。
あまり軽々しく中山を走れと言ってもらっても困るのだ。陣営の方こそJG1を制したいに決まっている。
しかし馬のことを第一に考えての選択だということを知っておいてほしい。弱い相手しか相手をしないのなら
JG2にも出走しないはずだ。中山JG1馬との対戦から逃げたこともない。所属である関西の競馬場を中心に
出走可能なレースに出続けてきただけなのだ。関西あるいは府中にJG1があれば間違いなく出走していただろう。


レースの格の話を抜きにしてもコウエイトライの記録は歴史的なものだと思います。
グランドマーチスバローネターフ以降にも多くの障害の名馬は出てきているが、重賞7勝という記録は
20年以上前に達成されて以来一度も並ぶ者さえいなかったのだから。しかもコウエイトライ牝馬なのだ。
生涯の世界では明らかに牡馬よりも記録面、つまり実力で劣ってきた牝馬が、この記録に並んだということは
非常に価値があると思うのです。グレード制以降、障害重賞を制した牝馬コウエイトライ以前は2頭だけで、
テンビーエースとメジロベイシンガーがともに1勝しかあげていません。グレード制以前には割と多くいて、
コウエイトライは牝馬としては既に障害界で歴史に残る馬になっていると思う - 座布団が行司にクリーンヒット
メジロマスキットは重賞だけでなく中山大障害も制している。ローズムーン中山大障害を最低人気で制した。
最低人気で大障害を勝った馬といえばユウフヨウホウが思い出されるが、過去に同じような馬がいたのだ。
もっと前にはブルーフラール、ムーテイイチなどの障害の名牝がいる。ムーテイイチは1972年の優駿賞馬だが、
優駿賞・・・現・JRA賞最優秀障害馬)生涯一度も中山で走ったことが無い。牝馬として目指すはこの馬か。
余談だが中山コースを勝たないまま最優秀生涯馬に選ばれたのは他にもいて、シンボリクリエンスやリターンエース、
一番最近では1997年にアワパラゴンが選ばれた。近年では主な勝ち鞍が中山大障害あるいは中山グランドジャンプ
1勝するだけでも最優秀障害馬に選ばれるようになった。これも個人的には不思議に思うことの一つだ。
2006年度JRA賞決定 最優秀障害馬部門でコウエイトライに5票 - 座布団が行司にクリーンヒット
2007年度JRA賞発表 コウエイトライが2部門で得票 - 座布団が行司にクリーンヒット
2006年から2008年にかけての3年間、コウエイトライは最優秀障害馬以外に票を獲得する唯一の障害馬だった。
中山大障害コースの勝ち馬は確かに偉大ではあるけれど、中山を勝っていない馬が選ばれてもいいのではないかと。
年齢のこともあり今後この3年間以上の成績をコウエイトライがあげることは難しいと思う。それだけに全盛期に
最優秀障害馬のタイトルはほしかった。まあ、これは個人的な感情も混じっていますが(笑)。


今回の勝利ではあくまでタイ記録。本当に評価されるためには単独トップの記録を作るしかないと思う。
そうすれば間違いなく日本障害界に輝く名牝として堂々と胸を晴れる。あと1勝、どうにか重賞を勝ってほしい。