座布団が行司にクリーンヒット

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アビスパ福岡 5年ぶりのJ1昇格

去年まで結構な数アビスパに関することを書いてきましたが、この1〜2年はあまり言及しなくなり、ちょうど
去年の今頃からまったく書かなくなりました。2008年は8位、2009年はJ2でクラブワーストタイの11位で終了。
来季に向けても先の見えない状況が続いていた時期、このままアビスパについて書き続けてもマイナスのことしか
出てこないと思い、さらに縁起を担ぐ意味もあってここまで休止していました。しかし、先日悲願のJ1昇格。
縁起を担いだ甲斐があったのかな(笑)。でもスタジアムにはここ数年で一番多く通っていましたよ。
この1〜2年はアビスパ福岡というチームもその周囲も変化が多すぎた年でした。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2010/text/201011240001-spnavi.html
アビスパ昇格の記事も多く出ています。やはり中倉さんの内容が一番濃くて的を射ていると思いますが、
私自身が確認する上でも時系列に従ってアビスパJ1昇格までの流れをまとめてみようかと思います。
データや内容は西日本新聞朝日新聞などの昇格特集などから引用している部分があります。


アビスパ福岡 昇格への道

2008年

アビスパ福岡の陥った「前門の虎後門の狼」の状況 - 座布団が行司にクリーンヒット
第1クールで15チーム中14位に終わり、リトバルスキー監督を7月に解任させ前日にS級ライセンスを取得したばかりの
篠田善之コーチが監督に昇格。同時にリトバルスキー監督に付いてきていたオーストラリア出身の
クルークヘッドコーチ、クレアフィジカルコーチなども解雇されたためトップチームがコーチ不足となる。
別のコーチを昇格させたり、福岡大学サッカー部に派遣されていた有吉和哉コーチを呼び戻したりして対応。
監督交代でチームのモチベーションは上がりその後善戦したものの、結果的に8位で終了。
1.どうするアビスパ<1>失望 羅針盤なき航海の先は - 輝け!FANTASISTA! FC FOREST HAKATA
サポーターからもマスコミからも批判を受ける経営陣、都筑興社長。

2009年

http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00077836.html
中村北斗FC東京へ移籍するも、ロアッソ熊本からFW高橋泰ジュビロ磐田から田中誠が入団。福岡大学からは
宮路洋輔、永井謙佑の二人を特別強化選手にする。ただしこの二人はさすがに戦力としては扱われなかった。
この年の戦力は決して悪くないと思っていたが結果は出なかった。シーズンオフにベテラン選手を中心に解雇。
中払、宮原、黒部、久永、吉田といったシーズン中も出場機会のあった選手たちの解雇には驚きもあったが
チーム若返りのために思い切って舵を切ったと評価した。ただし長野の解雇、宮本の移籍はいまだに疑問が残る。
田部和良GMが契約満了により退団。この人は福岡大学との連携を深めたり、ホームタウン活動の推進など
http://121.119.171.103/cgi-bin/sfs4_diary/sfs4_diary.cgi?action=article&year=2008&month=12&day=18&mynum=68
決して手腕は悪くはなかったと思うが、リトバルスキー監督とともに結果を出せなかったのは事実で仕方ない。
コーチ陣もほとんどを解雇。その中で森下仁之ヘッドコーチはチーム強化統括として残留。
篠田監督は批判を受けつつも監督続投。前年にアビスパ生え抜きの監督を据えた時点でそう簡単に変えらない。
まだ半年しか監督経験がなかった人がこの年やっと1年間監督を経験できた、という年だったのだから。
この時点で2010年の躍進を誰も予期できてはいなかっただろう。西日本スポーツではこんな記事も。

この末継記者は今年の昇格時にも記事を書いているが、この頃は「正直、アビスパを嫌いになっていた」と
正直な気持ちを吐露していた。篠田監督を続投としつつも、裏では最後まで新監督を探していた都筑社長…。
しかし森下氏が強化担当に入ったことから、それまで経営陣・フロントがコーチ陣も決定していたのが、
篠田監督が自分の信頼するコーチを呼べるようになったことがその後のチームを大きく変えることになる。

2010年シーズン前

篠田監督が自ら呼んできた松本良一フィジカルコーチ、浅野哲也ヘッドコーチの就任は明らかにチームを伸ばした。
そしてXデー、1月28日がやってきた。都筑興・代表取締役社長の辞任である。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/flash/KFullFlash20100127115.html
シーズン直前に都筑興という放漫経営の天下り社長が逐電した盟主アビスパ 5年振りにJ1復帰:Birth of Blues
アビスパ福岡代表取締役社長・都筑興社長が迷言を連発 - 座布団が行司にクリーンヒット
アビスパ福岡 「大都技研」の出資を承認 - 座布団が行司にクリーンヒット
これまで社長の無能っぷりに4年間付き合ってきたサポーターたちもこの日ばかりは飛び上がって喜んだと
言っても過言ではないでしょう。長く続いた暗黒期がついに終わったのです。大きな負の財産を残して…。
http://www.avispa.co.jp/release/news/topic1002.html#tag55
http://www.sponichi.co.jp/seibu/news/2010/02/24/03.html
新しくやってきた社長は今までのスポンサーかたのたらい回し出向社長とは違い、「七社会*1」出身ではない、
それまでのアビスパでは考えられなかった新社長だった。株主以外からは初めての社長。前の会社を辞めてまでして
来てくれたのだ。前社長がやめてから1ヶ月経ってからの就任だったので決定は難航していたと思われる。
しかしこの人で本当によかったと、開幕戦のスピーチで思わせてくれた。アビスパには記録員などボランティアの形で
携わっていて、何よりサッカーが好きで、やる気があった。アビスパサポーターとしてはもうこれだけでよかった。
さらに電通九州の大分支社長ということで経営、営業面でも変わった。新取締役のお二人も社長を支えた。
経営陣が変わったことは選手たちにも良い影響を与え、昇格に向けて大きな転換点となりました。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/flash/KFullFlash20101123080.html

2010年J2開幕

サッカーコラム J3 Plus+ 【岐阜×福岡】 アビスパ悲願のJ1昇格決定
前年度にベテランの解雇があったとはいえ、シーズン終盤は勢いがあり、戦力の流出を抑えたことが良かった。
レンタル移籍してきていた阿部嵩岡本英也を完全で獲得、丹羽大輝のレンタルを延長、田中佑昌は2年連続で
サンフレッチェ広島からオファーを受けていたが、アビスパに残ってくれていた。
そして特筆すべきは新加入選手の活躍である。特に永里源気中町公祐末吉隼也の3人はシーズン中フル回転で
働いてくれた。現有戦力とも上手くかみ合い、外国人選手の力無しで*2ここまでやれたのは奇跡に近い。
2年連続で下位に低迷していたため前評判も決して高くはありませんでした。しかしこうして結果を出した。
篠田監督はリトバルスキー監督体制のコーチ時代から選手に慕われ、リティから選手たちの心が離れていった時に
現役引退直後で年代が近いこともあって選手たちの精神的な支えになっていました。だからこそ監督交代直後に
連勝してチームを立て直すことができたし、中村北斗選手などは「篠田監督だからチームに残留した。リティのまま
だったら移籍を即決していた」と言うほどでした(後に移籍しますが)。それだけ選手に慕われていた監督でしたが
それが逆に良くない部分もあると感じた篠田監督は今年から選手たちと距離を置き、あえて厳しい監督になるよう
努力したのだそうです。それが選手達にも伝わり緊張感を生み、コーチの尽力もあってチームが結束した。
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/211681
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/211916

アビスパのこれから

都筑社長は辞めたとはいえ彼らの残した負の財産は大きく、新経営陣に重くのしかかります。アビスパ福岡株式会社は
2006年に減資を決行。これは30億円以上存在した累積赤字を一掃するために行われたもの。損益を被ったのは
出資していたスポンサー企業などで、これ以降アビスパに対する支援などは下がり続けているといいます。
減資により経営状態を立て直すことができていたならばまだ信頼回復の道筋があったのでしょうが、
減資後にやってきた都筑興社長が就任してからの4年間、2007年の2100万円の黒字を除いて他3年間は大幅な赤字。
アビスパ福岡:年間予算の変遷(20100427現在): NETTARO倉庫
彼が社長の間、4年間で2億6600万円ほどの赤字を出したことになります。スポンサーの信頼どころか
これ以上赤字にすれば会社が危ないほどの状態に陥っていました。次の経営陣は経営規模を縮小して出費を減らし、
黒字化させることが最初から義務付けられていたわけです。社長の選任が難航していたのも頷けます。しかし新社長は
今年この難題を突破し、J1昇格しつつ黒字化にまであと一歩というところまで来ています。七社会からの出向でなく
新進気鋭でやる気のある社長だったからこそ出来たことではありますが、七社会ほか福岡財界の影響力が
減ったということは、これまでのような支援が受けられなくなるということでもあるわけです。
しかし支援が減ってチーム運営費も少なくなった中でのJ1昇格は、資金よりも経営陣・トップに立つ人間次第だと
いうことを証明しました。来季は厳しい台所事情の中でJ1残留を成し遂げられるか、経営陣の手腕が期待されます。


2010年の運営費は9億円で、人件費は3億円程。前回J1時の運営費は17億円弱で、人件費は2倍くらいあったそうだ。
今季選手のほとんどが日本人選手だけで構成されたのも資金不足によるものだったし、大塚社長をはじめ経営陣は
そもそも今年昇格することは想定しておらず、3年計画でのJ1復帰を目指していた。新規獲得した若手を育成し、
同時に会社の体力も回復させるステップの段階で運良く昇格してしまったのだった。逆に言えばまだ体力のない状態で
昇格してしまったわけだ。今季どれくらい苦しかったかと言うと、他チームがアウェー戦に6人帯同させていた
ところをアビスパ西鉄旅行様から支援を貰うまでアウェーのベンチ入りは5人までに留めていたくらいたった。
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/190647
昇格で現選手達の給料も上げなければならないし、新規の選手も獲得しなければならない。
しかし来年度が今年以上に資金があるわけでもなく、これ以上の赤字を出すことができない状態でもあり、
まずは経営改善、赤字の返済が目標となってくるため新スポンサーがつかない限り大幅な戦力増加は見込めない。
http://www.sponichi.co.jp/seibu/news/2010/11/24/03.html
だからと言って、もし今年昇格を逃していたとして、来年再来年確実に昇格できていたかといえば不透明なわけで、
とにかく上がれる時に上がっておかないと。仮に来季降格したとしても「3年計画の2年目」として考えて、
再来年度以降に飛躍できるよう準備するための年になればいいと思う。J1に残留できれば運が良かったということで。
“レベルファイブ スタジアム”のネーミングライツ契約が3年間延長 - 4Gamer.net
ありがたいことに博多の森競技場のネーミングライツレベルファイブスタジアム」の契約が3年延長されることも
発表になった。スタジアムは福岡市の所有なので命名権費用は福岡市に入るが、その福岡市からアビスパ
支援を受けている。この契約延長は「レベルファイブ」が『イナズマイレブン』シリーズで大成功を収めており
引き続きサッカースタジアムの命名権を所持したいという思惑はあるだろうが、アビスパがJ1昇格を決めて
今後さらにスタジアムの名前が全国に伝わることも大きな要因となっているだろう。今季博多の森では何度か
イベントが行われいたが、もっとイナズマイレブンレベルファイブ関係の企画が増えていけばいいと思う。


さて、来季に向けての動きはもう既に始まっている。久藤の引退、ジャンボほか解雇選手の発表。そして新戦力…。
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/211678
http://www.avispa.co.jp/release/news/topic1012.html#tag5
アビスパは2008年頃から「少数精鋭」と銘打って登録選手数を削減し、サテライトリーグに参加できないほどに
なっていました。他のJ2チームもそのような状態のチームは存在し、九州でもサテライトのチームが組めない
というチームが多かったことから今年は「九州チャレンジリーグ」を開催し、サテライトリーグとは別の形で
練習試合ができるようにしていました。そんなわけで選手枠に関してはかなり余裕があります。外国人選手枠も
思いっきり空いていますしね。だから今季は以前に比べて解雇選手はそう多くありません。かなり驚きはしましたが…。
アビスパ福岡 所属31選手中15選手を解雇 - 座布団が行司にクリーンヒット
アビスパは「即戦力補強型」と「若手育成型」どちらを選べばいいのか - 座布団が行司にクリーンヒット
しかし人件費がギリギリの状態でここまでやってきましたし、来季もそこまで期待できないとなると、
新戦力もそこまで多くは獲得できない気がします。獲得するにしても解雇選手か掘り出しモノの新人くらい。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/jleague/2010/transfer/new_j2.html
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/210322
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/213311
新人では畑本時央選手と牛之浜拓選手の加入が内定しているが、注目は福岡大学永井謙佑選手だろう。
個人的には無理だろうと思っているが……本人の地元愛にかけるしかない。本人が海外志向だけにアビスパ
来たとしてもあくまで踏み台程度にしか考えられていないだろうし、まあ、話題になればそれでいいので来てほしい。


第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会|大会・試合|日本サッカー協会
とりあえず12月25日に行われる天皇杯準々決勝、対FC東京戦は現段階の戦力がJ1勢にどれだけ通用するのか、
良い試金石になると思う。これまでJ1の2チームを倒してここまで進んできてはいるが、
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2010/text/201011180002-spnavi.html
どちらもお互いにサブメンバー中心で本気ではなかったわけだし(広島は割と本気を出してきていたが)、
どちらもPK戦での決着だった。もちろん延長戦終了まで同点だったことは評価に値するが、勝ち進んだのには
運の要素も大きい。さすがに優勝を目指すなどと大言壮語は吐かないが、決勝に進出して2位賞金はほしい所だ。


http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/212847
鳥取がJ2入り、松本山雅は見送り - サッカーニュース : nikkansports.com
一応、新スポンサー獲得の見込みもあるようだ。今後ますます新経営陣にかけられる期待は大きくなっていくだろう。
同時にサポーターも成熟していかなければならない。一時的に成績が悪くなり、チームが自分たちの好きなサッカーを
していなくても我慢しなければならないことは出てくるだろう。かつて松田浩監督や小林伸二強化部長を感情だけで
批判して追い出すような真似は二度とあってはならない。チームに対する批判をしてはいけないわけではないが、
自分たちが主張した内容については責任を持たなければならない。間違った行為を行い、言ったままであっても
放置しておけばみな忘却し時間が許してくれると思うのは大間違い。過去の行為を反省せずけじめをつけぬまま今まで
やって来たからこそ、未だ周囲の不信感をぬぐえず信用されていないのだから。J1ではサポーターの質も問われる。
アビスパ福岡が小林伸二強化部長を更迭 後任に田部和良氏 - 座布団が行司にクリーンヒット


アビスパ福岡の戦力

ダブルボランチの確定

アビスパは伝統的に4−4−2のシステムで戦ってきており、ダブルボランチが特徴。このシステムはサイドからの
崩しに重点を置き、場合によってはサイドバックが攻撃参加する。今年のアビスパに関してはサイドよりも真ん中の
ダブルボランチの働きが目立った年だった。よく篠田監督はどんなタイプの監督なのかと尋ねられることがあるが、
監督の現役時代が中盤の選手で自身の活躍の場であってこともあってか、特にボランチを重視している気がする。
思えば2004年から2006年にかけてのJ2好調時〜J1昇格時に成績が安定していたのはホベルトという不動のボランチ
いたからだった。彼は中盤のダイナモとして獅子奮迅の活躍で、特に守備での貢献が大きかった。しかし2007年に
ホベルト選手が突然退団すると、リトバルスキー監督の下でフォーメーションは一定せず、試合に使われる選手も
常に変わり続けた。リティに代わり篠田監督就任後もボランチの選手を固定することはできず、2009年の不振にも
繋がったと思われる。しかし2010年シーズン開幕試合、篠田監督が指名したダブルボランチは二人とも新人という
あまりにも思い切った起用で周囲を驚かせた。少なくとも前年度後半に安定感を見せていた阿部嵩は必ず使われると
思われていた。柏レイソルからのレンタル移籍だったのを完全で獲得し、背番号も4番と今季は期待されていた。
しかし蓋を開けてみれば中町公祐末吉隼也の二人が不動のスタメンとして定着し、阿部の出番は完全に失われた。
阿部選手は今年で解雇通知を受けている。本来ならば二人のサブとして置いておきたいのだが……お金がない。


比較すると中町は攻撃的、末吉は守備的ボランチということになる。得点も圧倒的に中町の方が多い。とはいえ、
中町も守備で大きく貢献しているし、末吉は中町のいない所のカバーに回る。二人のどちらかでも欠ければ困る。
中町の特徴はその技術だけでなく、とてもクレバーなところだと思う。また周囲がよく見えていてパスコースを
すぐに探し出すことができる。ボールを持たせればサイドハーフやFWが上がるまでキープしていてくれるし、
常にゴールチャンスも狙っていて裏からの抜け出しやミドルレンジからのシュートでこれまでチーム2番目の
10得点を挙げた。まるで完璧超人のように見えるが、それもこれも末吉がカバーに回っていてくれているからだ。
中町が前線につけば空くスペースがあるわけで、そこを器用に抑えるのが末吉の仕事。また相手がロングボールなどで
一気に前線まで繋ごうとすればDFライン近くまで戻って守備もする。そして試合終了まで運動量も落ちない。
久藤清一選手の引退が発表になりましたが、私はこの二人でボランチに目処が立ったことで本人が決断したのでは
ないかと思っています。膝に爆弾を抱えつつも昨年の段階では「まだやれる」と判断したため現役を続行されたと
おっしゃっていましたが、今年も「まだやれる」という思いは抱きつつも、後進に譲るという考えに至った。
その決断を促したのが二人の実力だったわけです。チーム内にサイドハーフにはそれなりに選手が集まっていますが、
広い視野で試合全体を把握しその時々で的確な判断を下すことができる能力はチームではベテラン久藤選手がぴか一で
これまでその後継がなかなか出てきませんでしたが、やっと後を託せる選手が出てきて、引退の判断だったのでは。


今年アビスパが負けた試合はその多くが引いてくるチームを相手にした場合だった(強すぎる柏レイソルを除き)。
J2では戦力差のある下位チームは引いて守ってカウンターや縦のロングボールで相手の隙を突くという戦法が
上手く行く場合が多い。水戸、栃木、草津、岐阜、愛媛などに負けた試合は、相手チームが試合開始直後から
好調なダブルボランチを経由するボールを避け、ひたすらに縦へのロングフィードを出し続けてチャンスを拾った
というものが多かった。そういう時にはDF陣の働きにかかっているわけだが、そこでやられているということは
裏を返せばDFに一抹の不安があるということだ。田中誠丹羽大輝の両センターバックは決して上背のある方ではなく
ボールの落下位置や相手の動きを予知して守備するタイプだ。対人に弱いというわけではないのだが、いわゆる大型CB
ではないので競る回数が増えれば当たり負けることも出てくる。しかし上位陣に対しては戦力的にJ2では反則すぎる
(特に外国人が)柏を除いて対戦成績ではシーズン通して優位に立てた。中盤を制したことが昇格の要因だろう。
今季大量得点の試合が多かったが、中盤を制すことで試合を完全に掌握したという試合になったのだろう。
また今季は3失点以上の試合は一度も無かった。不安視されていたDF陣だが意外と守備も安定していた。
総失点34点は柏に次いで2位タイ。総得点は63点で順位どおり柏、甲府に次いで3位だった。
そして引き分けが少なく、勝つか負けるか、という結果が多かったのも特徴だ。好不調の波もあった。
来季に向けて課題は山積みで、戦力は足りない。経営陣とフロントには大きな舵取りが求められる。

各ポジション別評価

FW

アビスパの得点ランキングは1位永里源気の15得点、2位中町公祐の10得点と、FWよりもMFの選手の活躍が目立つ。
しかし決してFWが仕事をしていなかったからではなく、チームの戦術による影響が大きかったからと言える。
篠田監督が掲げた攻撃理念はシンプルに「相手の裏に抜け出す動き」。中町が基点となって両サイドにパスを送る。
しかしそれだけでここまで得点することはできない。シーズン通して常に献身的なFW大久保哲哉選手の働きが
あったからこそだ。自身も決して少なくはない9得点をあげている。ゴールキックやDFラインからのフリーキック
ターゲットとしてだけでなく、大久保にマークがついていたからこそ永里や中町がフリーになれた。
そして何よりFWでありながら前線でのディフェンス、常に相手にプレスをかけ続けた体力と精神力には頭が下がる。
あえて自分が潰れ役になることで他の選手を活かした。自身も2008年に14得点、2009年には16得点でチーム得点王。
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/205592
今年に入りアレックスの持っていたアビスパ福岡のチーム歴代最多得点記録を更新しており、決して点を取れない
選手ではないが、今年はあえて自分の役割を貫いた。攻撃陣に大久保に代わる選手がいないのだ。長身で体を張って
ボールを落として他に繋ぎ、あるいは前線でボールを追い掛け回す……。城後や岡本にそこまでを求めるのは酷だし、
吉原はまだ若くて使えない。そんな代えの利かない選手であったはずの大久保選手に戦力外通告が出された。
http://www.avispa.co.jp/release/news/topic1012.html#tag5
確かにチーム内でも高年俸選手の一人ではあったろうが、まさか彼が切られるとは思いもしなかった。フロントの、
チームの大黒柱を切ってでも絶対にJ1に残留するという意思の表れである。またこの判断は大きな賭けでもある。
恐らく代わりとなる大型FW(外国人選手か?)を獲得する算段ではあるのだろうが、大久保以上の選手の獲得は
絶対条件であるわけだし、責任は重い。チームがJ2で苦しんでいる時期に得点だけでなくムードメーカーとして
存在してくれていた。サポーター受けも良く、一緒に応援歌を歌ったりしていた。彼ほどの実力だからJ2では
引く手数多で再就職先には心配していない。今は心からアビスパに来てくれて本当にありがとうと言いたい。


FWでほかに特筆すべきは城後寿選手と高橋泰選手だろう。城後はそれまでボランチとして使われることが多かった。
攻撃的なプレイスタイルを活かすためであったが、ボランチで確固たる地位を築くことはできなかった。
そして前半戦を怪我で棒に振り、戻ってきた後半戦。当初はボランチで出場したいと志願した城後に対し篠田監督は
FWとしての起用を選択した。これがハマった。後半戦だけで8得点は注目すべき数字だ。元々高い能力はあったのだが
ボランチとして使うと久藤ほどの戦力眼はなく、自分が今どこにいるのか何をすべきか分からないままプレーしている
ような気がしてならなかった。FWとして「点を取る」という一点に集中させたことが功を奏したのではないだろうか。
そして高橋も一時期怪我や若手の台頭で出場機会を奪われ、ベンチにも入れない日が続いた頃があった。しかし
そんな状況にもめげず常に高いモチベーションを維持、後半戦に入って貴重なスーパーサブとして活躍した。
点を獲りたいという時間帯にいずれも効果的な4得点だった。生粋のストライカーで、その動きは常にゴールに向き、
得点感覚はいまだチームでも一、二を争う嗅覚を持っている。35節の対東京V戦の直接FKでのゴールは伝説物だ。

MF

ボランチの選手は上で散々話題にしたのでそれ以外、ここではサイドハーフで使われる選手について語ってみる。
永里源気選手は今季のアビスパの相手の裏を取るサッカーを体現したような存在だ。持ち前のスピードでサイドを
駆け上がり、あるいはすばやく裏に抜ける動きに関してはずっと在籍している田中佑昌選手に定評があったが、
永里選手はボールを持ってどんどん仕掛けるタイプ。バイタルエリアでダイアゴナルにドリブルさせると相手DFは
そうそう捕まえられない。そして積極的にシュートを狙う。結果的にチーム最多得点の15点という結果を残している。
岡本英也選手はFWとしても使われることが多かったが、サイドハーフが合っているように思う。持ち前の突破力で
決定機も作ったがフィニッシュの精度に欠けるところがある。鈴木惇選手は左足から繰り出されるプレースキックには
定評があり、CKで直接ゴールを決めたこともあった。久藤二世として育てたいところだが、まだそこまでの域には
達し切れていない。割と便利屋として扱われることも多く戸惑う部分もあったのだろうが、久藤選手が引退した今、
来年からはサイドハーフ1本でスタメンを狙っていってほしい。もっと思い切ったプレーが見たい。

DF

センターバックは左・田中誠、右・丹羽大輝サイドバックは左・中島崇典、右・山形辰徳でほぼ固定化された。
CBの二人は決して背は高くなく対人で圧倒的な強さがあったというわけではないが、的確な落下位置の見極めや
体を入れる上手さ、視野の広さと判断力でチームを引っ張った。丹羽選手はガンバ大阪からのレンタル移籍だけに
来季J1で戦っていくために完全移籍での獲得こそが残留の必須条件となる。SBの両人は以前からディフェンスの面や
ちょっとしたミスで危機的状況を作ったりと不安定な部分が多かったが、今年は幾分改善されてきたと思う。SBは
攻撃参加することも多いだけに試合中は全速力で走ることが多いが、スタミナの面でもより信頼できるようになった。
DFラインの4人が固定されたことは大きいが、逆に言えばどこか欠けると脆いということでもある。
山口和樹、宮路洋輔の若手二人の今後の伸びに期待が高まるが、層が薄いという点では否定できない。
柳楽智和選手が解雇されたこともあり、シーズン開幕までに是非とも補強しておきたいところである。

GK

アビスパは近年に関してはキーパーは常に安定した選手が出てきてくれて安心して見ていられるポジションではある。
かつては水谷雄一選手が長きに渡ってゴールマウスを守っていたが、他彼がチームに移籍後も神山竜一選手がすぐに
チームの守護神となったし、間にベテランの吉田宗弘選手が入りつつ次の六反勇治選手もしっかりと伸びてきている。
特に反射神経というか、ボールに対する反応は神山、六反の両選手ともに素晴らしいものがある。あとはキーパーと
しての洞察力(引くか、飛び出すかなどの一瞬の判断)やDへの指示などは試合に出つつ培っていくことだろう。

*1:こちらを参照ひとりごと - 座布団が行司にクリーンヒット

*2:U-18ユース出身の孫正倫は北朝鮮国籍、途中加入の李鍾民は韓国、この二人だけは違うが。