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PATで地方交流重賞など発売へ

中日新聞中日スポーツがすっぱ抜いていた「地方競馬の馬券をPATで発売」というニュース。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101103_7
http://mytown.asahi.com/areanews/iwate/TKY201010190417.html
http://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20101111/CK2010111102000137.html
地方競馬の方面で続報が入ってきていましたが、このたび正式に発表になったようですね。


http://jra.jp/news/201012/120201.html
http://www.keiba.go.jp/topics/2010/1202.html
12年からPATで地方重賞 相互発売拡大 - 競馬ニュース : nikkansports.com
http://www.sanspo.com/keiba/news/101203/kba1012030507009-n1.htm
http://www.sponichi.co.jp/gamble/flash/KFullFlash20101202089.html
http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2010/12/03/22.html
2012年1月からの実施ということで再来年からということになる。発売対象はダートグレードレースや一部重賞で、
今後検討されていくという。また、地方競馬の共同トータリゼータシステムにJRAのシステムを接続することで
相互発売を可能にしていくようだ。これで地方競馬が所有する発売機器でもJRAの馬券を販売することが可能になり
地方競馬場だけでなくそれに付随する各場外などでもJRAの馬券を発売することができるようになる。
既存の地方競馬発売を担当するオッズパーク楽天競馬にとっては大きなダメージとなるだろう。PATでの発売は
重賞などに限られるためその他レースは引き続き上記二社が行っていくが、「重賞さえ買えればいい」という客は
そのままPATだけを使って新規の客を呼び込むのは難しくなってくるだろう。オッズパーク楽天競馬に加入して
いなかった人たちは新たに銀行口座を作らなければならなかったり、手続きが面倒という人も多いようだし、
これからPATが地方の全馬券を発売…ということにすぐにはならないだろうが、両社の存在意義が問われてくる。


PATの顧客は地方競馬側にとって大きな魅力だ。交流重賞一つでも岩手競馬関係者は「5〜6倍は伸びる」と見ている。
地方競馬は経営規模が小さいため、たった一レースのたかだか数億円程度でも黒字化に持っていける可能性は高い。
台所事情が厳しく存廃議論が高まっている地方競馬にとっては大きな手助けになるだろう。ここに来て地方競馬
日本の競馬界全体の衰退をやっとJRAも看過できなくなってきたということだろうか。しかしJRAもただでPATを
NARに分け与えてやるようなことはしなかった。地方全競馬場及び全場外発売所でJRAの馬券を購入可能にすること。


これはあくまでJRAと各地方競馬間との交渉次第で、どの競馬場がどれだけのJRAの馬券を発売するかは現段階では
定かではない。佐賀や荒尾では既にG1レースだけでなくG2以下の重賞レースも発売してきたし、荒尾競馬場では今年
杉村一樹騎手のWSJS出場を記念することもあって、荒尾競馬場内のJRAの発売窓口でWSJSの馬券を発売した。
今後のシステム構築でJRA全レースの馬券を全地方競馬場で発売できる体制が整えられていくということになる。
地方競馬場JRAの馬券を発売することは諸刃の剣にもなり得るので、発売する場合は発売レースや日数、時期を
地方競馬は熟考して決定していく必要があるだろう。私がホームとしている佐賀競馬場では以前からJRAの馬券を
発売しているが、たった一つのG1レースを発売するだけでもお客の入りは大きいものがある。しかしこれで
喜んでばかりはいられない。JRAの馬券を購入しに来たお客は佐賀競馬の馬券を購入せず帰ってしまうからだ。
有馬記念やダービーといった大レースになればなるほどその傾向は顕著で、まだ佐賀競馬のメインレースが
終わっていないにも関わらず、それまで賑わっていた競馬場からお客がいなくなってしまうとことが多々あった。
場合によってはメインスタンドにいる客よりもJRA場外に群がるお客の方が多いのではないかと思われるほどだ。
そんな状況のためJRAの馬券を発売したとしてもその競馬場の馬券を買うお客は少なく、場合によっては既存の客を
JRAに取られてしまう可能性も高い。JRAの馬券を買いにきた新規のお客を取り込む努力を各地方競馬は行って
いかなければならないのは当然だが、JRAの馬券発売で逆にお客が奪われれば本末転倒。慎重に考える必要がある。

また、JRA地方競馬側にPATシステムを開放する一方で、いままで困難だった「海の日」などの祝日にJRA開催を提案。地方競馬側に了承されれば、今後はそのほかの祝日にもJRAが開催するレースが増えそうだ。
(9月16日付 中日スポーツ

さらにJRA地方競馬場での馬券の発売だけでなく、PAT発売の見返りにJRAが祝日に競馬開催することを
これまで以上に認めるよう提案しているようだ。昔からJRA地方競馬間には紳士協定のようなものがあったようで
JRAの開催は土日だけで平日の祝日には開催しないという住み分けができていたのだが、JRAは数年前の競馬法改正で
一開催における開催日数を調整可能にし、祝日の月曜日も開催して3日連続競馬を行うようになった。
地方競馬のパイを奪ってまで売り上げを伸ばすのはいかがなものかと思っていたが、今後さらにこの祝日開催を
進めていく方針のようだ。地方競馬側もこれらの点で譲歩することでPAT発売が認められたのかもしれない。
日本競馬全体のことを考えて……というよりも、あくまで商売の一環としてNARと交渉しているような感じ。
地方競馬場内でJRAの馬券を売るのだから、代わりにPATだけでなくJRA競馬場内でも地方の馬券を売れるように
すればいいんですけどね。今回のシステムが構築されれば理論上可能になりますし、なんなら平日も場外発売所
だけは開けて地方の馬券を売ればいい。JRAとしても普段平日使うアテが無い競馬場やWINSなどの場外施設を
有効活用できるし、ごく一部の窓口に限れば人件費も施設費も少なくて済む。以前小倉競馬場内に佐賀競馬場外が
設置してあった。現在でも一部のJRA競馬場内には地方の馬券を発売するコーナーがあるが、どうやら賃料が
高かったらしく小倉の佐賀場外は元が取れずに撤退となったそうだ。お互いに場外を設置し合えるようになれば
地方競馬JRAもより良い関係になれると思うのだが、JRAとしては譲りたくない部分もまだ多いようだ。


競馬ブック』で野元賢一氏が語っていたことによると、これまでJRAの馬券を発売していた競馬場では
場外の機械や警備ほか人員などすべてJRAが用意し、競馬場側は場所を貸しているだけで、売り上げの1%を
「協力金」として受け取っていたそうだが、今後は地方競馬場JRA場外すべてを委託運営することになり、
「手数料」として売り上げの5%を受け取れるようになるという。この4%アップは地方競馬場が負担する
JRA場外の運営費が増加することをふまえても、大きな利益になるのではないかと試算されているようだ。
どのレースを売るかなどは各個競馬場とJRAが交渉し、競馬場によっては発売しないところもあるかもしれない。
また、PATで発売する地方の馬券についてもJRAは「ある一定の条件」を決めているそうだ。この条件とは恐らく
地方交流重賞ということになるのだろうが、条件に満たない競馬場が存在する、とも野元氏は言っている。
つまりダートグレードの存在しない競馬場では今回のPAT発売に何の利益も受けない可能性があるということだ。
そして交流重賞を発売するということになれば、交流重賞を開催している数の多い競馬場がより多く売り上げが
増えることになり、今以上に格差が広がる可能性もある。先に述べたダートグレードの存在しない
荒尾競馬場福山競馬場ばんえい十勝競馬、ダートグレード競走を返上している笠松競馬場、一つしかない
金沢競馬場高知競馬場も「うまみ」は少なくなる。ダートグレード、交流重賞が行われていない競馬場こそ
今一番苦しい状態にある競馬場であり、それらの馬券を売ることができなければ今回の決定は意味を成さない。
JRAはある程度条件を緩和して、交流重賞でなくても大きなレースであれば販売できるようにしてもらいたい。
しかし現実問題としてJRA所属馬が出走していないレースを、JRAのPATのお客が購入するか、という点は分からない。
荒尾競馬などはまだ大レースの霧島賞などは交流競走だが、ばんえい競馬などに至っては交流競走はありえない。


交流重賞の無い競馬場(ばんえいを除き)に新たにダートグレード競走を新設(復活)させればいいかもしれないが
PATでの売り上げを見込んで安易に創設するのは、賭けに近い。ダートグレード競走では賞金などを開催する
競馬場とJRAが折半しているというが、このJRAが負う割合を多くすれば開催できる競馬場も出てくるだろう。
果たしてJRAがそこまでのことをしてくれるかと言えば、可能性は低い。現存する交流重賞JRA枠を増加させるなど
PATのJRAからのお客にとって買いやすいようなレースにしていかなければ、固定客とはなってくれないだろう。
しかしこれら全てはJRAの判断次第だ。地方競馬側として出来ることは、これまで平日開催していた交流重賞
PAT客が買いやすい土日に持ってくることくらいだ。野元氏は交流重賞の同日開催もコラム上で提案していた。
現段階ではまだはっきりとした枠組みは発表されていないが、PATでの地方競馬馬券発売が地方競馬の救世主と
なる可能性は十分にあるのだから、JRAには柔軟な対応を取ってもらいたい。野元氏コラムの中にあったが、
2001年当時JRA理事長にNAR理事長がPATでの発売を要請した際、JRA理事長は頑なに拒絶したという。
まだ地方競馬にも体力が残っていた頃だったというのもあるが、時代は流れて各地方競馬が存亡の危機の中で
JRAとNARも当時ほどの軋轢は無く、関係改善に向かっている中での今回の発表だったのだろうと思う。
今、思い切った判断で地方を救済しなければJRAを含め日本競馬全体がおかしくなる瀬戸際にある。
NARといちいち折衝して一つずつカードを切り合ってうまい条件を引き出す…というような時期ではもう無い。
JRAには日本競馬を背負う代表機関として、競馬界を活性化させるために大盤振る舞いを見せてほしいところだ。