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AJCC裁決の感想と今後への影響 JRAの国際化とか色々

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AJCC裁決新ルールで判定 苦情60本 - 競馬ニュース : nikkansports.com
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個人的にはパトロールビデオと裁決判定を見て「まあこんなものか」と特に気にしてもいなかったのですが、
ファンからは苦情、マスコミ・評論家からも批判的な意見が噴出したようでその反応に驚いたくらい。
普段ほとんど降着など起こらない(ゴール前の油断騎乗くらいか)地方競馬をメインに見ているせいか(笑)。
審議のランプが点っても大体は着順そのままだし、ここ数年は戒告はあっても降着自体見たことがないなぁ。
先日の佐賀でも馬券を買っていた馬が4コーナーで明らかに前をカットされ怯んで減速したにも関わらず
審議のランプすら点灯しなかった。そのお陰で馬券は大きく外したが大体いつもこんな感じだしな…と。


個人の感想はとりあえず置いて、裁決が妥当だったかどうか。これも各人で判断が分かれるところだろう。
降着・失格「新ルールの不透明さ」浮き彫りに
ファンに分かりやすい説明を

 「着差などをトータルで見て、今回のケースは加害馬より被害馬のパフォーマンスが上回ったとは判断せず、新ルールでは審議ランプをつけるには至らないとした」との見解を発表。(中略)
 一方で「去年までのルールなら、恐らくダノンバラードは走行妨害との認定で降着になっていただろう」とも

http://www.daily.co.jp/horse/2013/01/21/1p_0005683717.shtml

 昨年までなら降着。だが、今年適用の新ルールでは「妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」と認められない限り降着とはならない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130121-00000029-spnannex-horse

私は専門家ではないし判断の技量に欠けるので裁決の妥当性についてはタッチしないが、
JRAが裁決ルール変更により判断を下したというのは分かった。そして「昨年までは降着だった」ということも。
ただ裁決基準が昔も今も分かりにくいというのはその通りだと思う。JRAとしては被害馬が先着していたという
確たる証拠がなければ降着はしないという判断のようだが、なぜその判断に至ったのかの基準だ。
解釈は裁決委員次第であり、結局は「人」による判断になる。これはルール変更前も後も同じ。
人間による判断なのだから完璧ではないし、当然間違いも出てくる。その時にどうするかという問題もある。
例えばだが、判断基準として「被害馬の推定上がりは○○秒、加害馬は○○秒であり、
 そのまま残りの○○mを走ったとしても計算上逆転は不可能であるため、降着はしない」というような
明確な数字を出してくれるのであればこちらも理解できる。しかし現状ではこれらのことを
裁決委員が完全に自己判断で決めているわけで、それでは人によって判断が分かれてしまう。
最終的には数名の合議の上で判定するのだろうが、そこで人間の感情や裁決委員の地位などにも影響される。
こうした基準・マニュアルを作っても各レースその時点での様々な要因も加わるので、その通りに裁定が
決まるとも思えないが、無いよりはマシだろう。ファンやマスコミへの説明がしやすくなり理解も得られる。
あとは「裁決ソフト」を作ってCPUに任せてしまうか。人が判断するより安心できるかもしれない。
果たしてソフト開発が可能かどうかだが…今の技術の進歩状況なら出来そうにも思えるのだが。


今回の裁決が今後にどう影響するか。現役騎手からは「やり得が増えるのでは」という懸念の声が出ている。
今回は特に加害騎手が外国人短期免許で遠征中のベリー騎手だったことも批判の声が大きかった要因だろう。
JRAの騎手ならば競馬サークル内での評価が下がりその後の騎乗数にも悪影響を及ぼすかもしれないが、
短期で騎乗する外国人や地方騎手ならば影響は少なく「やり得」が可能である、という話。
あるいは騎手の保護を条件に馬主が指示して意図的に行わせることも可能ではないか、という声。
そして忘れてはならないのは、その逆も考えられるのではないか。つまり故意に大仰なアクションを行うことで
大きな害を被ったと裁定委員を欺こうとする行為…サッカーで言えば「シミュレーション」によるファウルだ。
今回の件で被害側ばかりに目が行きがちだが、こうした可能性も考慮しておく必要があるだろう。
「そんなことをする騎手はいない」と言えばそれまでだが、仮に性悪説で加害側の「やり得」が考えられる
と言うのであれば、降着には至らなくとも相手騎手を戒告・騎乗停止にさせることだってあり得るのではないか。


そもそもなぜ裁決基準を変えたのかと言えば、JRAの長期的な国際化戦略の一環によるものだ。
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何のための「国際化」? - king-biscuit WORKS
JRAでは海外から門戸開放を求められ、かなり前から国際化に向けて様々に動いてきた。
パート1国入りはその前段階であり、外国人馬主認可や国際グレード国内グレードの一致化、
拍車やムチの使用制限にまで及んでいます。JRAがアラブ競馬を廃止したのもその政策の一つだったという。
その影響でアラブ生産頭数は激減、アラブ馬に馬資源を頼っていた地方競馬は大きな影響を受けることになり、
アラブからサラブレッドへの転換が遅れた競馬場から次々と廃止されていったのは周知の事実です。

ご存じのように、JRA主導で「国際化」を進めてゆく上で、アラブと障害が大きなネックになっていました。結果、政策的な判断で、障害は国際競走まで導入、テコ入れされ、逆にアラブは番組を廃止してゆくという明暗が。百歩譲って、当時のその判断の是非はともかく、そこから先、地方競馬が生産地も含めてなだれを打って右へならえをしてしまったことについて、未だきちんとした議論も検証もされないまま、「時代の流れだから」と片づけてしまっている、その横着、不誠実が僕には何よりもやりきれません。

http://d.hatena.ne.jp/king-biscuit/20060830/p1

今回の裁決ルール変更も国際化の一環だろう。「カテゴリー1」変更の影響が表に出てしまったわけだ。
「国際化」という響きは良く聞こえるが、弊害もあるということをよく考えてみてほしい。
売り上げに悪影響を及ぼしている面も多いのでは。結局JRAは国際化によって何がしたかったのだろうか。
何でも追従するのではなく、ある程度日本競馬の独自色として譲れない部分があってもいいのではないかと思う。
何より馬券を買うファンの為になっているのか。私は国際化それ自体に反対するつもりはないが、
その影響で日本競馬が衰退するようであれば、国際化を拒否して日本独自の競馬を続ける路線もあるはずだと思う。
年々売り上げが減少しているとはいえ未だに馬券の総売上額は世界一とされている日本競馬。
むしろ海外の競馬場に日本のシステムを広めたいくらいで、それもまた「国際化」ではないだろうか。
国際化の名の下でのルール変更が何でも許される状況はあまりよろしくない。アラブもそうやって廃止となり、
この時は延命できた障害レースもいつ廃止にされるか分かったものではない。日本は日本で良いものがある。
今回の「裁決ルール変更」問題だけに囚われず、JRAの国際化路線も注視しておく必要があるのではないだろうか。