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金子光希騎手が平地免許返上 障害専門に

http://jra.jp/news/201302/pdf/020703_02.pdf(注:pdfファイル)
JRAの免許更新騎手一覧が発表されました。中には障害免許を返上して平地専門になった騎手もいますが、
あえて今の時期に平地免許を返上した金子光希騎手に注目したいと思います。現在これで障害専門騎手は
植野貴也騎手、金子光希騎手、北沢伸也騎手、西谷誠騎手、林満明騎手、平沢健治騎手の6名になりました。


実は2010年に出津孝一騎手が引退したことで障害専門ジョッキーが一旦は0人になっていました。
このタイミングを見計らってかJRAは「10年後をめどに障害廃止」(某月刊誌だけがソースですが)という方針を
打ち出したらしく、障害騎手たちがJRAへの抗議と廃止の動きを止めるために、次々と平地免許を返上します。
2011年に植野、北沢、西谷、林の4騎手。2012年には平沢騎手が。そして今年に入って金子騎手が続きました。

今日、植野騎手とおしゃべりしている中で、
『そういやなんで平地の免許返したんですか?』って聞いたんですよ。
そしたら結構悩んだ末の決断として返上したんだ、というお話しを聞きました。
それは、最近障害戦に力を入れていないJRA側。
このままでは、いずれ『廃止』の可能性も出て来るかも。
そんなとき、『今居る騎手の生活はどうなる!』って抗議したとして…JRA側に…
『いや、平地の免許持ってるやん。平地乗れば?』って言われたら、はいオシマイ。
馬が集まる、集まらないは別として、免許あるんだから文句言うなよ、とはJRA側からしたら正論だからね。そう(障害戦廃止に向かって)なって行かないことを願うのはもちろん、そうなってきたときに言われないように、という気持ちで平地の免許を返したんだ〜、と語って下さいました。

http://ameblo.jp/merci-a-time/entry-10819492377.html

この段階をもってしてもまだ「JRAが障害を廃止にするなんて…」と高を括っている人もいるかもしれませんが、
6人のこれらの行動を見るに障害レースの存続はかなり切羽詰った状況にあることが伝わってきます。
騎手たちはかなり勇気の要るの決断だったことでしょう。もう平地に乗ることができなくなるのですから。
これだけの実力行使に移してまで障害競走を守ろうとしている関係者が6人の騎手以外にいたでしょうか。
実質彼らだけで戦っているような状況でしょう、孤立無援ですよ。もっと他の騎手や調教師たち、
馬主・生産者のお偉方、そしてマスコミ等は、声を大にして障害存続をアピールしてもいいんじゃないですか?
一大キャンペーンを張ってJRAに存続を訴えるべきでしょう。なぜその動きが出て来ないのか、正直腹立たしいです。


ただ、障害免許を持っていても騎手の多くが障害戦に乗ろうとしない今の状況のままそんな運動が起きても
またいつか同様の話は出てきてしまうでしょう。騎手が乗りたくない理由が障害レースの危険性にあるのなら、
それを改善する為の策は取らなければなりません。前にも書きましたがコース改修や斤量を増やすなどして
スピードを落とし、落馬事故を減らすことなどが考えられますが、結局はJRAが協力しなければ不可能な話です。
障害戦で騎手確保できず出走取消 障害騎手不足が健在化 - 座布団が行司にクリーンヒット
JRAを方針転換させて行動に移させるためにもまずは障害レース存続運動が巻き起こることを期待します。


改めて私個人の考えを書いておきますが、障害レースは廃止すべきでないと思っています。
現段階で馬主(生産者)が所有馬を障害転向させるようとする動きは後を絶たず、需要があるわけです。
何より私は多様性が競馬の魅力であると思っていますし、過去にはJRAが独断でアラブ廃止を強行したことで
生産地へ打撃、地方にも波及して廃止する競馬場が続出し、競馬産業自体が衰退した過去の例を見るに、
障害競走の廃止が及ぼす影響はかなり大きいものがあると思われます。JRAとしては国際化推進の一端、
あるいは障害レースの売上げの低さが理由ではないかと推察しますが、目先のことに囚われすぎています。
売り上げが低いのも平地に比べて障害レースのPRがまったく足りないことが要因ですし、
むしろアピール次第で新規ファン開拓の素地は十二分に存在すると思っています。
上で障害戦の安全性向上について書きましたが、危険性や落馬率を抑えるためにも非常に重要なことです。
しかし違う観点から一部ファンが、障害競走だけが平地に比べて危なくて、馬に対して残酷で、だから廃止すべき
というような感情的な意見については私は否定します。中にはアナウンサーのような競馬マスコミに携わる人が
同様の意見を語ることもありますが、呆れてしまいます。障害レースは落馬故障の状況がはっきりしているため
目立ちがちですが、故障すれば平地も障害も同じ。「ガラスの脚」と称されるサラブレッドにとって
予後不良の危険性は高いのです。結局の所もし障害レースが廃止になったとしても、
‘乗馬’の名の下に毎日毎週のように競走馬の殺処分が行われることに変わりはありません。
競馬ファンならあえて言及せずとも誰もが知っている話です。本当に乗馬になったり繁殖に上がれる馬はごく一部。
その事実を心の底で黙認しておきながら、障害レースにだけ感情をぶつけるのは卑怯だと思います。
その点では障害レースや地方競馬などの新天地に活路を見出して馬たちにチャンスを与える方がマシでしょう。
活躍して賞金を稼ぐことができれば馬主が功労馬として大事に扱うこともあるでしょうし、
あるいは一つでも重賞を勝つことができれば、今は「引退名馬繋養展示事業」がありますから助成金が出て
なおさら余生を過ごせる可能性も出てくるでしょう。廃止になればそういった可能性の芽を摘むことにもなります。
競走馬は経済動物であり、競馬に携わる人たちはその業を常に背負っているということを
自覚しておかなければなりません。競馬ファンもまたその事実を忘れず心の片隅に置いておきたいものです。
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