少し前の『競馬ブック』に「エクイターフ」と呼ばれる新種の芝についての特集がありました。
元々日本で使われていた芝は日本原産の野芝で、時代が下るにつれ海外産の洋芝と併用されてきました。
オーバーシードで枯れた野芝コースから年中緑の芝に変わっていったように、馬場造園課も日々進歩しているのです。
近年になってそれまでの千切れやすい野芝に代わりJRAが新品種として開発したのがエクイターフです。
http://www.equinst.go.jp/JP/arakaruto/column2/c03.html
エクイターフ(選抜野芝) - 人と自然の未来へ 株式会社大丸グリーン
エクイターフは長崎県の五島列島がふるさと
芝の強度比較では1m2あたりの茎の密度や地下部分の重量、芝のちぎれにくさの値がそれぞれ2倍
また、成長が早くてクッション性にも富んでいる
野芝の中でも特に強度が高いとされていたのは鹿屋産野芝ですが、それに匹敵するくらいの強度なんだそうです。
現在では気温が低く生産できない北海道の札幌・函館と、京都・阪神以外の競馬場で使用され、
中山・東京・中京などでは2割、福島・新潟では7割、小倉で五割ほどの割合で使われているんだそうだ。
一方でエクイターフの弊害も出てきてしまう。それが「高速化」だ。
JRAの芝は世界的に見て硬く、高速馬場だというのは関係者だけでなくファンの間でも共通の認識として
広まっているかと思う。この特徴的な馬場が日本の競馬をガラパゴス化させ、世界との隔たりを生んでいると。
20年前のJRAの芝馬場の硬さが120G程度だったのに対して、ここ数年の芝馬場は90G程度まで軟らかくなった
http://keiba.jp/column/truth-track/?cid=3693
ただし相対的に見れば20年前の硬さと比較すれば軟らかくなっているはずなのに、それでも批判は受ける。
しかしJRAもそんな批判をただ甘んじて受けているだけではありません。JRAの馬場造園課は世界の競馬の中でも
技術的に先進した集団です。最近では馬場を柔らかくする為に様々な方法を取りつつあるようです。
それが「エアレーション」と「シャッタリング」という技法です。
夏の新潟開催から実施したという「エアレーション」がそれ。新潟、そして秋の中山は、野芝のみによる開催となるのですが、野芝は硬いので、クッション性に乏しく、高速馬場になりがちでした。これを解消するために、簡単にいうと芝馬場に切れ目を入れて空気を送り込むエアレーションという措置を施して、芝の生育状態を向上させ、クッション性を高める、というものです。また切れ目を入れたこと自体により、地盤そのものに柔らかさを持たせることもできるので、一石二鳥の効果があります。
http://keiba.nifty.com/cs/column-detail/pdetail/mizukami20131002/1.htm
これらの機械が使われたかどうかはJRAの馬場情報欄を見ればわかる。たとえば第4回新潟(今開催)の馬場概要には「開催前に馬場の硬化防止の目的でエアレーション作業とシャッタリング作業を実施しました」と書かれている。このうちエアレーションがバーチドレンでの穴あけ作業で、シャッタリングはトレマーによる根切りを指している。
http://keiba.jp/column/truth-track/?cid=3693
競馬王9月号チラ見せ企画 コースの鬼『秋の中山・阪神で絶対に知っておかねばならない重要な特徴とは?』 後編 | 競馬王オフィシャルブログ
バーチドレンとトレマーは↑こちらに画像がある。要するに物理的に芝や路盤をかき混ぜて柔らかくする機械。
バーチドレンとトレマーを同時に行うとさすがに芝がぐらぐらになってしまうので、年にそう何度もは行わないそう。
エクイターフの強度があるお蔭でこれらの方法が可能になったとも言えるかもしれない。
JRAとしては丈夫で剥がれにくい芝を作ったつもりがそのせいで馬場が高速化してしまい、
その対策に新しい技術を生み出した形だが、なかなか全てが上手くはいかないものだ。
これはもちろん完成形ではなく今後も試行錯誤を繰り返してこれからもコースの技術は進歩していくことだろう。