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中国へ輸出されるサラブレッドのほとんどは血統登録されていないらしい

今週の『競馬ブック』には香港競馬に詳しい土屋真光氏による「アジア競馬会議レポート」が掲載されていた。
様々な話題が載っていたが詳しくは見ていただければ。個人的に気になった部分はこのタイトルの件。
よく考えてみるとそりゃそうだ、中国政府は公式には賭け事としての競馬開催を認めていないからだ。
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公式ではないが中国でも競馬自体は行われている。「速度競馬」「比べ馬」は現地ではピーサイ(比賽)と呼ばれ、
スポンサーなどもついて賑わい、勝ち馬のオーナーには賞金もつくという。ただ、本格的な競馬ではないため
当然のことながら賞金も安いし開催数も少ない。お金持ちの人がステータスとして馬を所有する側面があるようだ。
しかしこれら競走は私設のものであるため、血統登録の必要など当然ない。


それに対してJRAの代表が「血統登録した方がいいよ」的な働きかけを会議内で行ったそうだ。
日本はかつて明治から大正にかけてオーストラリアからサラブレッドを輸入し、改良を行おうとしたことがあった。
輸入された血統の馬は競馬でも非常に強く内国産馬を圧倒したため、主要なレースに出走できなくなったりもした。
いわゆる「豪サラ」だ。この時代はまだ日本国内に公式な血統登録制度がなかったため特に問題は起きなかったが、
昭和以降は国際的にサラブレッドが正式に定義され、血統不詳の馬は「サラ系」と呼ばれるようになった。
当初は「豪サラ」やその血を引く馬たちが強い時代が続いたが、時代が下るにつれて国内全体のレベル上昇とともに
「豪サラ」の血が特別でなくなってくると、「サラ系」とされて逆に評価を低くしてしまった歴史がある。
豪サラ - Wikipedia


JRAはつまり中国にも同様の過ちを犯してほしくないと言っているわけだ。今は特に必要ではない血統登録でも、
将来的に中国が競馬を解禁した折、それ以前に輸入された馬たちは「サラ系」に分類される可能性が高い。
どんなに優秀な能力を持っていてもかつての日本のようなことが起きないとも限らない。
中国は世界各国からサラブレッドを輸入しその頭数は年々伸びている。
日本のセールにも中国人バイヤーが来日して高額馬を落札していっているが、
その中に良血馬がいたとしても血統登録していなければ競馬の世界から見ればただの「馬」でしかない。
……そうは言っても国が競馬を認めておらず一部の裕福なオーナーが楽しみで馬を走らせている現状では
よほど特異な人でなければ血統登録はなされないだろう。香港でなら可能なのだろうか?
手っ取り早いのは中国政府が競馬開催を公式に認めることだが、それも今のところ不透明。
世界から集められた良血馬たちはこのまま「サラ系」になってしまう運命なのだろうか。


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