地方競馬の大井競馬を主催する東京シティ競馬(TCK) 特別区競馬組合は、世界最高峰のレースの一つが行われるアラブ首長国連邦 (UAE) ドバイのメイダン競馬場と同じ、人工素材を使ったオールウェザー (全天候型) 馬場に変更する検討を始めた。
(中略)
世界最高峰のレースを行う競馬場と同じ馬場にすることで、一気にグローバル化を果たせる。実現には多くの関係者の理解が必要で時間がかかりそうだが、検討を進める。
大井競馬場にポリトラック導入か - 座布団が行司にクリーンヒット
大井競馬の小林分厩舎にニューポリトラック使用坂路導入 - 座布団が行司にクリーンヒット
大井は2008年頃からポリトラック馬場の導入を目指しており、小林分場の坂路にニューポリトラックを入れて
試用するなどして研究も重ねてきました。競走馬の故障率の低下、整備費用の軽減などの利点があるとされ、
さらに海外でも導入が進んでおり、導入すれば外国馬の国際競走への出走も増えるのではないかということで
大井競馬やJRAも導入の為に色々と模索しています。当初は私も非常に面白い試みだと楽しみにしていたのですが、
どうも利点のみでは語れない部分も、オールウェザー馬場にはあることが分かってきました。
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美浦・栗東・小林などの調教コースに試験導入されているニューポリトラックは、夏場の暑さにより
混入されているゴム片が固まってしまい、調教ができなくなったことがあった。最近ではそうなる前に
ハロー掛けをして掘り起こしているそうだが、「ハロー掛けなどの整備が省略できる点で負担が軽減する。」という
理想からはかけ離れてしまっている。ただ、気温の低い時期は評判通りあまり整備は必要ないらしい。
しかし、冬は冬で夏には起きない気象現象がある。積雪すると使えなくなり閉鎖されることもあるのだ。
美浦は芝コースなど雪で閉鎖|競馬ニュース|競馬予想のウマニティ - サンスポ&ニッポン放送公認SNS
除雪すると下部のクッション層までめくってしまうのだという。ダートの場合は凍結防止剤を使って
ハロー掛けし続けることで溶かすことができるようだが、ポリトラックはそれができないらしい。
また水はけは良いが、排水にも限度はある。大雨で素材が流れていってしまう可能性も大きい。
それでは大井が導入予定だという「ドバイのメイダン競馬場と同じ人工素材」の『タペタ』はどんな感じなのか。
ドバイワールドカップは、メイダン競馬場のオールウェザーコースで行われる。「全天候型馬場」という名のとおり、水はけがよく、風で飛んだりしにくい、新素材の人工馬場である。
http://jra.fc.yahoo.co.jp/6/47/
頭文字をとって「AW」と表記されるこのコース。メーカーによって呼称が違い、メイダン競馬場のAWはタペタ社製の「タペタ」。
日本の美浦トレーニングセンターや栗東トレーニングセンターなどで調教用に使用されているAWは「ニューポリトラック」というもの。
タペタは砂にゴム片や人工繊維、ワックスを混ぜたもの。ニーュポリトラックは、砂にゴム片や電線の被覆材などとワックスを混ぜたもの。
このタペタは踏み込むと脚が埋もれて土がまとわりつくと言うよりも地面がそのまま沈む感じです。実際に馬が通った跡を見てみると蹄鉄の形がはっきり見えるくらいの後がついています。ということで脚抜きに関しては考えなくていいと思います。ただしこの沈みこむ感じは当然クッションの役目を果たしてしまうため馬の脚力を奪うことになりますので芝よりはパワーがいると考えていいでしょう。特に脚を蹴りあげる力より下へと踏み込む力がいつもより求められると思います。
http://doumokanoudesu.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-d913.html
ドバイ・メイダン競馬場 その1 | 地方競馬の楽天競馬|日替わりライターブログ - 楽天ブログ
タペタ | 地方競馬の楽天競馬|日替わりライターブログ - 楽天ブログ
ニューポリトラックとは開発した会社が違い、素材なども異なっているようだが、オールウェザー馬場の
欠点がすべて解消されているわけではないようだ。また、ドバイと日本とでは気候や開催時期も大きく違い、
ドバイでは上手く運用できていても日本では難しい面があるのでは?と思われるところがある。
ドバイ - Wikipedia
アラブ首長国連邦の競馬場 - 公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル (JAIRS)
1.高温
気温の点では、日本より暑いはずのドバイで使われているのだから何の問題もないのでは?と一瞬は思ったが、
これはメイダン競馬場の開催時期・時間が上手く調整されているために可能になっているものだと思われる。
メイダン競馬場での競馬開催は11月中旬から3月下旬までの、年間でも気温の低い期間に行われる。
この時期、ドバイの気温は最高でも30度を超えることは少なく、夜間ともなると最低気温は15度〜20度くらい。
さらにメイダン競馬場での開催はすべてナイターで行われる。つまり、際立った高温で行われることはないのだ。
それでも日中はたまに30度を超える猛暑になる日もあるようで、そんな時はしっかりと散水している。
散水 : グリーンチャンネル「2011ドバイワールドカップデー衛星中継」オフィシャルブログ
2011年05月17日のブログ|★☆ミ NEO-PLANETARIUM ☆★彡
しかもこれが画像を見ると自動散水装置でかなりの水量を使っているようだ。日本ではさすがに新たに装置を
導入しないにしても、この水量を撒くには散水車で何周すればいいのだろうか…それくらいの水が必要に見える。
2.降水量
ドバイでは年間降水量が100mmにも満たない地域だ。日本では一日、いや一時間に100m前後の大雨が降る事もある。
近年ではゲリラ豪雨などの被害も多くなってきている。これだけの降水が一気に来た場合、排水は追いつくのか?
3.積雪
ドバイでは当然ありえない。
日本は欧州、米国、ドバイなどとは大きく違い、地球規模で見ても特殊な気候形態を持つ地域と言える。
高温多湿、かつ冬は寒く、台風などによる突風、大雨洪水、降雪……と、四季折々で様々に天候が変化する。
日本の特色に合った素材が開発されればいいが、他国のものをそのまま持ち込んでも失敗するだけだろう。
他にも、ワックスやゴムが溶けて土壌・水質汚染を引き起こす可能性や、馬への皮膚病の影響などの不安も。
私程度の心配は当然馬場の専門家の皆さんも考えていることだろうから、もちろん対策はするのだろうけど。
オールウェザーのことを調べていくと、なんだかんだで日本のダートは万能なんじゃないかと思えてきた。
砂は流れることはあるが、足せばいいし。砂とオールウェザー素材とでは、同量の場合のコスト比も気になるなぁ。
……まぁ、導入しようとしてるのがお金持ってる大井とJRAだし、失敗しても元に戻せばいいだけか。
むしろ失敗を恐れず進めてくれるわけだから競馬の発展に寄与するという意味ではありがたい話だ。
アメリカでは一度失敗して元のダートに戻した競馬場もある。そういう過程も時には必要なのかもしれない。